≪キャンペーン≫

選挙戦たけなわであるーと書き出したら、「たけなわ」にあたる表現の<
in full swing>が頭に浮かんだ。「フル稼動、最盛期の」という意味で、<The tourist season is here in full swing.>(観光シーズン、いま真っ盛り)などと使う。無論、選挙戦についても使えるー。

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swing>は、ものが左右に揺れる意味から「変動、振幅、ぶらんこ、野球やゴルフのスイング」等を表わす言葉だが、米語では、選挙の「浮動票」を指す新聞用語でもある。支持が一定でなく、どちらにも動く票のことを<swing vote>という。豪州では<swinging vote>が一般的。英国では、浮き草のように安定しないことから<floating vote>だ。選挙戦の勝敗を決するのは無党派層の行方だから、どの陣営もその取り込みに懸命である。

「選挙戦」などに使う「戦」の字は<単+戈(
ほこ)>で、<単>が「はじき弓。古代の遊び道具で弾弓(だんぐう)ともいう」を表わし、合わせて「武器を持って争う」ことが字源。物事の勝敗を競う意(挑戦、舌戦、宣伝戦など)。和語の「たたかう」は「タタキアウ(叩き合う)」からともー。

「選挙戦」を英語で<
election campaigncampaigning>という。<campaign>は、ラテン語の<campus>(平野、広場)が語源で、フランス語<campagne>を経て17世紀の英語に入り、「野原⇒戦場⇒軍事行動⇒作戦」のように意味が変化した。動詞にも使う。日本語の「キャンペーン」は、組織的な「啓蒙宣伝活動」の語義だけをとり込んだものだ。

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camp>も<campaign>と同じ語源で、「軍隊などの野営地、収容所、キャンプ場」を指す。選挙の「支援者グループ、陣営」の意味にも使われる。また、大学の「キャンパス」<campus、構内⇒大学全体を表わす語>も同じラテン語からで、米国プリンストン大学(ニュージャージー州、創立1746年)が初めて用いたそうである。

綴りは少し違うが、<
champion>(チャンピオン、競技の勝者)も同源だ。結婚披露宴などで乾杯する時の「シャンパン」<champagne、シャンイン >は、フランスのシャンパーニュ地方(Champagne)産の発泡ワインに限って使用できる名称。この地名も<campus>の原義である「平野の多い地方」に由来する。因みに、その他の発泡ワインは、単に<sparkling wine>である。発音が同じで綴りが違う<champaign>(シャンペイン)は、「平野、平原」である。

「選挙戦」<
campaign>の「勝者」<champion>の「陣営」<camp>が、「シャンパン」<champagne>で「乾杯す」<campus>・・・と並べたら、妙な戯文になった。選挙が「完敗」なら、むろん「乾杯」はお預けだ。

被災者救援などを呼びかけて行なう街頭募金を「カンパ」と称する。この和製語は、ロシア語の <kampanija>を省略したものとされているが、これも、前出のラテン語がフランス語経由でロシア語(「組織活動」)になった同源語。

カンパとコンパ。学生などが費用を出しあって開く懇親会の「コンパ」は、よく似ているが別語。これは<
companion>(友人、同僚)を短縮した造語で、語源はラテン語 の<companio>。<com(一緒に)+panis (パンを食べる人)>から「食事仲間」が原義。「会社」の<company>も、やはり「仲間、”同じ釜のメシ”」が起源であるー。